平天下の日記

平天下と言います。備忘録としてブログを始めてみました。

2022年度に円の実力が50年ぶりの低さになったことに対する考察と提言@初学者なので間違いがあればコメントで訂正お願いします!

 2022年2月、円の実力が50年ぶりの低さとなった。日本経済新聞原油を始めとする国際商品価格が高止まりしていること、輸入物価の上昇を通して消費者の負担が増していることを強調した。一方で産業経済新聞は近年の日本におけるデフレの影響について述べている。日本の物価上昇率がゼロであることに対し、米国の物価上昇率が年平均2%程度である。この状況が20年続いたことで日本の物価・賃金が相対的に諸外国と比べて安価になったことが今回の原因であると述べている。最後に毎日新聞は安倍・岸田政権下において異次元緩和で円安を促し、景気回復を図った政策の手じまいが容易ではないことを挙げている。日本の経済運営の脆弱さがコロナ危機・ウクライナ戦争といった有事で浮き彫りとなり、円安がもたらすデメリットの不安を高めているとした。このように新聞社ごとに焦点の当て方は異なるが、今回の事態をネガティブな事柄として捉えている。

 ここで通貨の実力を示す基準である実質実効為替相場が重要となる。実質実効為替相場とは自国の財・サービス価格の財・サービス価格に対する相対価格を示し、その状態をもたらしている為替レートである。換言すると二国間為替レートに内外物価変動による通貨の購買力変化を反映した上で、貿易ウェイトで加重平均したものである。導出するための計算式としては、例えば日本の物価水準をP円、米国の物価水準をP’円、円建て名目為替相場をS(円/ドル)としたときS×P’/Pとして表される。この定義付けを踏まえた上で図1を見る。これは1964年から2023年における日本円とドルの実質実効為替相場である。確かにピークである1995年と現在を比較した場合半分以下に落ち込んでいることがわかる。

 実質実効為替相場の定義及び日本における状況について述べたため、次は日本の主要貿易相手国である中華人民共和国・米国・豪州の三か国と比較を行う。ここで定義内において値を導出するための計算式の要素の一つとして述べた、物価水準に着目する。というのは前述した通り物価が上昇しないデフレ状態の時に物価及び賃金が諸外国と比べて相対的に安くなる、あるいはインフレ状態の時に相対的に高くなることを客観的に示すことが出来るためだ。それを考慮したうえで図2を見る。ここでは1980年を基準とした物価上昇割合が示されている。日本が横ばいである一方で、オーストラリアや中華人民共和国といった途上国は急激な上昇が生じていることが分かる。また米国は日本と同様の先進国でありながらも、移民政策で労働力を確保し堅実な上昇を見せている。ここから物価水準の上昇割合を諸外国と比較する時、相対的に日本「円」の価値が減少していることが分かる。

 日本円の価値が減少した理由について二点ある。第一に物価高を受けて金融を引き締める欧米と、2%物価目標が未達故に超金融緩和を続ける日銀の姿勢の違いが起因しているためである。というのは日本のインフレ率は他国と比べて低いわけではないが政策金利がマイナスであり、他の中央銀行のスタンスと大きく異なるからだ。第二にプライマリーバランスの黒字化を最優先課題として掲げた結果、国民負担率が上昇したことである(図3)。換言すると税収を増加すると同時に政策経費を削減した結果国民の負担が大きくなった。それ故に相対的に低いインフレ期待と、それに伴う実質実効為替レートの低下をもたらした。

 結論として円の実力が50年ぶりの水準にまで低下した要因は、物価上昇の停滞が円の購買力を低下させたことである。この状況を打開するためには政策金利を調整するという安易解決策を取るのではなく政策経費を増加させ、経済安全保障・環境対策・デジタル化といった要素に長期的な投資を積極的に行うことが鍵になるのではないかと私は考える。

 資料

図1

図2

 

図3

 参考文献

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB208IY0Q2A120C2000000/#:~:text=%E5%86%86%E3%81%AE%E7%B7%8F%E5%90%88%E7%9A%84%E3%81%AA,%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E7%A4%BA%E3%81%99%E3%80%82

https://www.sankei.com/article/20220424-O67HQUWV45LSDABA5YBKJ4KNHI/

https://mainichi.jp/articles/20220328/ddm/005/070/012000c

https://www.mof.go.jp/zaisei/reference/reference-03.html

https://www.dlri.co.jp/report/macro/285478.html